【犬狼物語 其の二百七】 茨城県筑西市 三峯神社の首長お犬さま像
茨城県筑西市にも三峯神社があり、訪ねると、予想以上にすばらしいお犬さま像に出迎えられました。
神社は小さな公園になっていました。通りかかったおじさんが車の「所沢」ナンバーを見て、
「へぇ~、ずいぶん遠いところから。所沢のどこ? 俺も前住んでたんだよ」
と言いました。この辺の人にとって、埼玉県は隣県にも関わらず、所沢は遠いという感覚なのでしょうか。
遠いか、近いかは、その人の感覚の違いなんでしょうが、確かに、広い関東地方の西の果てに感じないこともありません。筑西市あたりにいると。
今でさえそうなのだから、江戸時代の人にとって、所沢どころか、秩父の三峯神社はかなり遠いところと感じていたでしょう。そこへお参りに行く意味は、だから今とは違っていたと想像できます。
社殿の玉垣前の左右、台座に乗ったお犬さま像は独特のフォームでした。首が長いお犬さまですがバランスが良く、流れるような曲線が美しい。静岡県の春埜山大光寺も曲線が美しいお犬さま像でした。気に入ってしまいました。ところどころ苔むした痕もまたいいですね。歴史を感じさせます。
三脚を立てて写真を撮っていると、たまたま公園に、別のおじいさんがやってきました。
声をかけると、この地区の三峯講の講元を務めている人でした。数年前まで自分で車を運転して秩父の三峯神社を参拝し、お犬さまのお札をいただいて帰り、講員に配っていたそうです。今は、取り寄せて、配るようになったとのこと。
お歳は聞いていませんが、70歳以上と思われ、年齢の問題もあるようです。三峯神社まで出かけるのは負担が大きくなってしまったそうです。それと、
「みんなの信心も薄くなってしまったしね」
という。
そうなんですよね。昔みたいに、火災・盗難除けとしては、今の時代厳しい。でも、信仰は時代とともに変化してきました。
だから、現代版の狼信仰というか、狼信仰に新しい意味を再発見できれば、生きている信仰として存続できるのではないかなと思うのですが。単に、過去の「遺物」「遺跡」となってしまってはもったいないと個人的には思います。
狼像はかなり古いものらしいのですが、おじいさんも詳しくはわからないとのことでした。
おじいさんのお父さんは、戦後すぐに亡くなってしまったので、この像のことを詳しく聞いていませんでした。ただ、
「三峯神社へ行ってお札をもらってきて講員に配ること」
というのが遺言みたいなものだったそうです。
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