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2017/12/16

坂本長利さんのひとり芝居『土佐源氏』

171216_1(楽風での坂本長利資料展)

171216_2(楽風での坂本長利資料展)


埼玉県さいたま市浦和区の日本茶喫茶・楽風で、坂本さんのひとり芝居を観ました。これで3度目です。

毎回違うことを感じて、飽きるということがありません。

本当にこれは「芝居」なんだろうか?と思いました。坂本さんに元馬喰が乗り移ったように感じてしまった昨日の芝居でした。それは坂本さんの年齢も関係あるかもしれません。

昭和16年、民俗学者の宮本常一が、橋の下で暮らす元馬喰の盲目の男の話を聞き取りしたのは、元馬喰が当時80歳のときだったという。坂本さんはその年齢をとうに越えて88歳になりました。

だから元馬喰を演じているのが坂本さんなのか、坂本さんを演じさせているのが元馬喰なのか・ ・ ・

このひとり芝居の回数も1190回。これもすごいことです。ギネスに申請しているとのこと。

今流行の「不倫」の懺悔(?)もあります。

ただ、元馬喰の話を聞けば、この「不倫」を道徳的に糾弾することがどんなに不毛なことかを感じます。むしろこの場合、「不倫」することが道徳的でさえあるのではないかと、そんなふうにも思いました。

ある身分の高い家の奥さんと、牛を買うということで知り合います。身分のある奥さんが、馬喰の自分を対等に扱ってくれることに好意を持ちます。だんだん親密になっていきます。あるとき、旦那が外に妾を作っていたこともあり、奥さんは幸せではないんだなぁと知ります。それで、奥さんと納屋の藁の中で・ ・ ・

「おなごと牛には嘘はつかなんだ」

と、元馬喰は言います。おなごと牛にモテた理由は、ここにあるのでしょう。

身分があろうがなかろうが、金持ちであろうがなかろうが、どんな人間でも、精いっぱい生きた人生は美しいんだなと感じます。それに引き換え、俺は、未だに地に足が着いていないような非現実感をおぼえながら、人生を送っているような気にもなります。

そういう名もない人の話を丁寧に掬い取った宮本常一もすごい民俗学者だった、ということなのでしょうが。

なお、12月23日、NHKが坂本さんの記念公演の旅に密着取材したドキュメントが放映されます。

ETV特集「老いて一人 なお輝く~一人芝居 50年~
 
 
 
 
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