【犬狼物語 其の二百十四】 東京都檜原村 大嶽神社の里宮
檜原村の県道205号から山道を1kmほど上ったところに大嶽神社の里宮が鎮座します。
石段を上り鳥居をくぐると、正面には拝殿、右側に小さな祠がありました。見ると、前には、鏡と犬像らしきものが。高さは10cmほどの小さな像ですが、2体座っていて、それぞれ姿が違います。狼(お犬さま)像に見えます。
そこへ宮司さんがみえたので、この狼像のことを聞いてみました。
これは、近県のある祠に祀られていた狼像だったそうですが、その祠が移転することになり、信者がこに返したもの。ここは役目を果たしたお札やお守を返納する納札所で、お札などはおたきあげの時に燃やすそうですが、この狼像は、このまま置いておくそうです。
ここは里宮で、元々狼像はありませんが、大岳山直下の本社にはあります。本社は日本武尊の徳を慕って山頂に社を建立したのが始まりです。狼が日本武尊を助けたという由来から狼を祀るようになったそうです。
江戸時代から戦前まで、大嶽神社にはたくさんの参拝客やってきていました。当時は50ほどの講がありましたが、今は8つほど。戦後は自動車道ができて、武蔵御嶽神社や三峯神社へは簡単に行けるようになったので、ここにはあまり来なくなったそうです。
神社の前に、山へ続く道が通っていますが、この道が表参道でした。途中には「何丁目」の丁目石もいくつか残っています。この表参道は急坂があって大変で、3時間半はかかります。今は、林道ができたので鋸山まで車で行って、そこから尾根道を伝って大岳山まで比較的楽に行けるようになりました。
神社の祭りは4月8日で神事が行われます。また4月第2土曜には、御輿が練り歩き、お犬さまのお札が各氏子に配られるほか、参拝者にもお札が授与されるということです。
江戸時代の版木が残っていて、お札はその版木からの手刷りです。印刷会社に頼もうかという話も出ましたが、やっぱり手刷りの方がいいだろうということになりました。かすれた感じも、素朴な味わいがいいですね。この前、貴布禰神社の壁に貼られていたお札です。
「最近は、お札をもらいたいという人も増えていますね」という。いろんなところから問い合わせがあるらしいのです。以前、富山から何人も連れだってお札をもらいに来たグループもいたという。
ところで、祭りではお神輿を担ぐ人も少なくなっていますが、それは全国どこでもかかえる問題です。それで今年から、神社庁が全国で過疎地を調査し、祭りにかかる資金などを補助する計画があるらしい。
宮司さんは、稲束、野菜、黒米、紫米を持ってきました。野菜は、広島県の信者が送ってくれたもの。聞けば、翌日(11月23日)の新嘗祭でお供えするものでした。
新嘗祭では、この新穀をお供えします。日本の稲作では一番大切な神事です。
「明日、宮中でも儀式が行われるはずです。ここでは、神事と言っても祝詞をあげるだけですが」
こんなふうに日本の各地、村々で、豊作を感謝する儀式が続けられていることに、感動すら覚えます。
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