【犬狼物語 其の二百六十一】 長崎県松浦市 人柱観音供養塔と白犬之塚
松浦市今福の古い街道沿いにあるお堂の中に祀られているのが人柱観音供養塔だ。隣には「白犬之塚」と彫られた碑があり、白い犬の像が置かれている。垂れ耳で鼻ぺちゃで愛嬌があり、狆のようにも見える。
松浦市のHPと由緒書きの碑文から伝説を要約すると、
江戸時代の初めころ、領主丹後守松浦信貞公はこの干潟を埋め立てて新田を造ろうと思い、家臣の田代近松という人物にこの工事の監督をあたらせた。
工事は海潮に侵され難工事で進まなかった。「工事の完成しないのは海神が埋め立てを欲しないからであろう。だれか人身御供となり、海神に捧げれば堤防工事は完成するのだが」と住民に相談したが、誰一人申し出る者がいない。困った田代氏は、「着けている袴のすそを横じまの布でふせている者があればこの犠牲者と定めよう」と提案し、住民それにも従うことにした。
袴を調べたところ横じまの布でふせているのは田代だけだった。こうして田代は生きたるまま白犬と共に堤防に埋められた。
田代の人身御供の犠牲で堤防も完成し、埋め立て工事も竣工した。悲惨な最期をとげた田代と白犬の霊を慰めるため、この観音供養塔を建てて祀った。
こういう伝説が点在するのは、土木工事の難しさの表れだろうし、犠牲になった人に対する同情と、成仏してほしい(祟らないでほしい)という願いと、その状況を強いた権力者に対する無言の抗議という意味もあるのかもしれない。
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