【犬狼物語 其の二百六十三】 北海道古平町 セタカムイ(犬の神)岩
続編の『犬像をtったずね歩く(仮タイトル)』でも、ぜひ使いたいと思っていたのが、「セタカムイ(犬の神)岩」。
古平町のセタカムイ岩の伝説は複数ありますが、その中に、千葉県銚子市犬吠埼の「犬岩」に伝わる伝説と似たものがあります。犬岩は義経から置き去りにされて鳴いた若丸という犬が岩に変わったもの。セタカムイ岩にも、アイヌの文化神であるオキクルミが、飼っていた犬を置いて、異国に去ったので、飼犬が主人をしたって、遠吠えしながら岩になったという伝説があります。
北海道には義経が平泉では死んでおらず、北海道に渡ったという義経北行伝説があり、この伝説もその影響かもしれません。
平取町には義経神社まで存在するというので、アイヌの伝統的な地域、二風谷といっしょに見てまわることにしました。
義経伝説は、和人のアイヌ対策で広められていったという説があります。アイヌに親近感を持たせるために、和人は義経を意図的に宣伝し、アイヌのオキクルミ伝説と結びつけたというのです。
どこまで史実なのかの判断は俺にはできませんが、伝説が存在するということ自体には理由があります。アイヌのオキクルミ、和人の義経。人々は英雄を求めます。伝説にはそうあってほしいという意識的・無意識的願望なども入り込む場合があります。
たとえば、こんな例もありました。
ミャンマーのシャン州にはクン族という、自分たちの祖先が日本人だという伝説を持つ民族がいます。この祖先というのが山田長政なのです(時代的に合わないのですが)。でも、これも日本軍が地元のクン族に親近感を抱かせるために持ち出した話らしいのです。ただクン族側にも、ビルマ族からの支配を脱したいという思惑があり、自分たちの祖先が日本人であることを、むしろ積極的に受け入れたという事情があるようです。
そしてもうひとつの伝説は、主人から魚を盗んだ猫を追いかけて岬まで行った犬が、崖を降りられなくなり、そこで死んでしまい、岩に化身したというもの。
猫を追って犬が岩になったというストーリーを聞くと、島根県の犬島・猫島の伝説を思い出します。どちらも犬が人のために猫を追っています。この伝説は犬の忠誠ぶりを強調しているのでしょうか。犬にそうあってほしいという人々の願望かもしれないし、犬とはそういうものだという思い込みかもしれません。
俺の実家では子供のころからずっと猫を飼っているので、猫も好きですが、「人を助ける」という観点から見ると、やっぱり犬に軍配が上がります。
ただ、この場合、崖で動けなくなって死んだ哀れな犬なのです。犬は人のためにと言って猫を追いましたが、主人や権力者に盲目的に従うおろかさやこっけいさが裏に隠されているのかもしれません。
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