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2018/10/14

平岩米吉著『犬と狼』に出てくる狼の伝説いろいろ

_mg_2635(「狼目」ではなく、これは山梨県上野原市「犬目」宿)


犬科生態研究所を創設した平岩米吉著『犬と狼』に、狼に関するいろいろな話があります。

まず、狼の最古の記録としては『日本書紀』に、大和武尊が東征の折、信濃坂において路に迷った尊を導いた白狗があったというもの。これは一説には狼だともいわれています。

次は『欽明天皇紀』(540年)に、秦大津父が喧嘩をしていた二頭の狼の仲裁をしてやったところ、その狼が天皇の夢に現れて秦大津父が大蔵大臣に出世をする糸口を作って、お礼をしたという話。

こういう記録があるんですね。昔から狼とは交流がありました。

また狼に関するまことしやかな説がいろいろとあって、有名なところでは、送り狼があります。

送り狼というのは、現代では、「親切らしく送って行って、途中で女をねらう男」という悪い意味がありますが、もともとは、狼の習性からきた言葉です。

著者によると、狼が人の後をつけるというのは実際にそのとおりだそうです。ただ、それは人を襲うという目的からではありません。おもに、好奇心、珍しいものを知りたいという気持ちからつけて来るのだそうです。

次は、狼の尾についての話です。

「狼は柄にもなく、気まりを悪がる性なので、いつも尾を股の間に引き入れてはずかしいところを隠しているという説であります。しかも、この説はだんだん発展しまして、ついには恋愛の季節の狼のいるところを通りかかった者は、こちらも衣服を脱いで狼のはずかしい気持ちをやわらげてやらないと、後で害を受けるという、まことに奇妙な考え方とさえなってしまったのであります。そして、この事は『煙霞綺談』と申す本などに堂々と、まことしやかに記してあるのですから、なおさら、驚くほかはありません。
 ところで、こういう説がどうして起こったかと申しますと、それは狼は犬とちがいまして、いつでも尾をさげて歩いていて、どんな場合でも決して尾を高く上げるということがないからであります。」

笑ってしまいます。狼の近くで服を脱いだら、その不審な動きで狼を刺激して襲われてしまいそうです。

もっとも、こういう説が出てくるのは、「衣服を脱ぐ」機会はほぼゼロであることをわかっている人たち、つまりは、狼の実物を見たこともなければ、見る機会もない人たち、ということでしょう。

狼に限らず、人間でも、知らない外国人に対して、とんでもない話が生まれるのと同じです。

次は、狼の目の光は火のようだという話です。

例として炭焼きの話が出てきます。炭焼きが暗くなってから、炭俵を背負って山から帰ってきました。

途中で、誰か道の端で休んでいるらしく、煙草の火が見えました。これを見て、炭焼きも急に煙草をのみたくなって、「火をひとつ貸して下さい」といったら、その火がウーッという唸り声を出したというんですね。つまり、この煙草の火に見えたのは、狼の目の光だったというのです。

これを読んで俺も同じような体験があったのを思い出しました。

話は狼のテーマから離れてしまいますが、中国雲南省での出来事を書いてみます。

イ族の祭り「挿花節」を見ようと大姚県を目指していましたが、当時、まだ外国人には未開放の町だったので、公安に通報されないように、宿には泊まらないつもりで、ちゃんとテントも用意してきていたので、それを張って寝ることにしました。

町の中はまずいと思い、家並を抜けて適当な場所を探しましたが、どこにも人の気配があったので、ソラマメ畑へ行ってみました。

畑の畦道を進んでいくと、暗闇の中に、赤い小さな火がポツンと見えました。蛍のようにも見えたので、なんだろう?と目をこらしてそばへ近づきました。50センチほど顔を近づけたとき、その赤い火が突然左右に揺れ、そしてオホン!と咳払いの声がしたので、俺は「アッ!」と驚いて、畦道から足を踏み外し、畑の中にあやうく転びそうになったのでした。

男がタバコをくわえ、畦道に座り、用を足していたのです。俺も驚いたが、男も驚いたのではないでしょうか。

中国って、どこへいっても人だらけだなぁという話です。

狼とは関係ない話になってしまいました。
 
 
 
 
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