『オオカミと神話・伝承』 (01) 古代ローマと日本のオオカミ
『オオカミと神話・伝承』(ジル・ラガッシュ著/高橋正男訳)は、世界のオオカミにまつわる神話や伝説を紹介した本で、古代ローマの狼信仰や、「蒼きオオカミ」の子孫たち、日本のオオカミについても触れられています。
ローマの建国者ロムルスと弟レムスとともに、雌オオカミに育てられ、このオオカミと兄弟の銅像はローマの守護神になりました。
紀元前1世紀ころ、雷がこの銅像を直撃しました。その結果、破壊され、寺院の地下室にかたづけられて人々から忘れ去られました。15世紀、像はカピトリウム丘に移されましたが、トスカナの芸術家が、あらためて双子の兄弟の像を造ったそうです。
この像のレプリカが、日本にもあります。日比谷公園と味の素スタジアムです。
以前、このオオカミ像の右足に怪我状の穴があることに気が付き、調てみましたが(イタリア文化会館でも聞いてみました)、依然その理由はわからず謎のままです。
ただ、世界のオオカミについての話をみてみると、だいたいは、「恐ろしい野獣」、あるいは、「強い戦士」、「崇められる神」というイメージで語られるようです。そのことと関係ありそうな気もするのですがわかりません。まだまだ謎です。だれか知っていたら教えてください。
日本のオオカミについては、すでに書いていますが、この本のコラムを要約すると、
日本には2種類のオオカミがいました。北海道のエゾオオカミと本州以南のニホンオオカミです。エゾオオカミは1889年ころ、ニホンオオカミは1905年ころ絶滅しました。
日本人とオオカミとの関係は、ヨーロッパとは違い緊張感が少なかった。その理由は、日本人の伝統的な食糧が肉ではなく、農民は家畜を飼わず、田んぼや畑に囲まれた村に住んでいました。そういうところは、オオカミには魅力はなかったので、山の中に住んで、めったに里に下りることもありませんでした。
時々山でオオカミに襲われることもありましたが、おおむね人間とオオカミは平和的に、お互いの領分を尊重して暮らしていました。農民が害獣とみなしていたシカやイノシシやウサギを食べてくれてもいました。
1732年に、本州で狂犬病が発生しました。もっとあとになって、ふたたび狂犬病が発生しました。そのたびに狩りが行われましたが、ヨーロッパと比べると小規模なものでした。
1743年に、日本を旅行したスエーデン人植物学者ツーンベリは、「日本には、オオカミはまれになってしまった。今や、もっと北に行かないといない」と断言しました。
という内容です。
西洋では、家畜が食べられてしまうことで、オオカミは害獣と考えられていたのとは違い、日本では逆にシカやイノシシを食べてくれる益獣でした。そこからオオカミが神や神の使いとして崇められる動物になりました。
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