映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』を観て
韓国で1980年5月に起こった光州事件を世界に伝えたドイツ人ジャーナリストと、彼を事件のあった光州まで送り届け、取材を助けたタクシードライバーの実話を基にした映画です。
簡単に言うと、普通のおっさんが、義憤にかられて、英雄になるという話、と言ってもいいのかもしれません。英雄はすぐ近くにいるのです。
ソン・ガンホ扮する主人公のマンソプは、タクシードライバーで、最初は単なる仕事として10万ウォンのためにドイツ人を光州まで乗せただけでした。全国で勃発している民主化のデモに対しても、どちらかというと迷惑な学生たちと思っているような、普通の一般市民でした。
ところが、光州に入り、様々な人に出会い、実際、軍隊がデモ隊に発砲してるのを見て、徐々に、国に対する疑いを持ち始めます。
そして、その暴動を鎮圧する軍隊の無差別虐殺をレポートするドイツ人ジャーナリストを助け始めるのです。
最後は名乗りもしませんでした。タクシーは人を乗せるのが仕事だから当然、というのです。カッコ良すぎです。
実際、ドイツ人ジャーナリストは、後日、韓国でこのドライバーを探すのですが、だれも名乗ってこなくて、再会していません。
一説では、このドライバーは、北の工作員だったのではないか、だから、名乗らなかったのではないか、という話もあるようです。真偽のほどはわかりませんが、少なくとも、この映画では、ドライバーは市井の英雄の話になっています。
映画の最後、タクシーが集結してドイツ人ジャーナリストを守るカーチェイス的なシーンは、いらない気がしました。これがなかったら、もっとよかったのにと思います。
ジャーナリストやカメラマンが、現地の案内人と仲良くなるという話は、カンボジアのポルポト政権下を取材したジャーナリストの映画『キリングフィールド』というのも覚えています。確かこの映画では、何年か後に再会していたと思います。
俺も、韓国では、棚田を探すために田舎町でタクシーを使ったことがあります。棚田の写真を見せ、こんなところに連れて行ってほしいと頼んだのです。やっぱり現地の人に聞くのが一番ですね。とくに聞慶へ行った時は情報もなかったので、ドライバーが知っている山村へ行った時は、感動しました。まるで日本と同じような棚田地帯だったのです。
タクシードライバーには、各国でいろいろと助けられています。
それと、メコン河源流を探して青海省のチベット高原を馬で訪ねた時の案内人ガッデさんなど印象に残っている人は多く、彼らの協力なしで目的地に行くことはできなかったでしょう。
難しい旅をともにしたということもあり、特別の友情を感じるというのは、俺もわかります。
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