【犬狼物語 其の三百十八】 千葉県佐倉市 国立歴史民俗博物館のオオカミ頭蓋骨化石
佐倉市の武家屋敷街に隣接した ひよどり坂から、日本の歴史、民俗学、考古学について総合的に研究・展示する国立歴史民俗博物館へ行きました。博物館は佐倉城趾の一角に位置し、「歴博」の愛称で親しまれています。連休ということで、昼には駐車場がいっぱいになりました。
展示は広範囲にわたって、質量ともに見ごたえ十分、いや十二分です。
とくに興味を引かれのは、やっぱり古代です。栃木県の藤岡神社遺跡(縄文時代)から出土した犬形土製品のレプリカも展示されていました。懐かしい。オリジナルは実際手に持たせてもらい写真に撮った資料です。これは『犬像をたずね歩く』に収録しています。
オオカミの頭蓋骨もありました。「直良信夫コレクション」の後期更新世のオオカミ化石です。(放射性炭素年代測定を実施した結果、オオカミの頭蓋骨は約3万6千~3万3千年前頃の化石であることがわかった)
直良信夫は、オオカミの生態や人間との関係、信仰などをまとめた『日本産狼の研究』を著した、考古学・古生物学・古植物学・動物生態学などの分野で数多くの業績を残した人物です。
展示の解説ボードにはこのようにあります。
「頭蓋骨は26cmあり、超巨大なオオカミである。ニホンオオカミの約1.3倍の大きさで、シベリアのオオカミよりも大きい。ヒトがわたってきたころの日本列島にはこのような動物が普通に棲息していた」
このオオカミの頭蓋骨は、栃木県葛生で発見されたものですが、ニホンオオカミが、大陸のオオカミよりも小さかったことは、このような大きなオオカミが日本列島に閉じ込められ、だんだん小さくなっていったという説を支持するのでしょうか。
「歴史系総合誌「歴博」第195号」(https://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/rekihaku/195/witness.html)にはこのようにあります。
「ニホンオオカミの系統については、近年の分子系統学的研究によればタイリクオオカミの中の一亜種を形成すると考えられている。一方、形態学的にはタイリクオオカミとは異なった特徴をもつことから、日本列島における遺存固有種とする考えとタイリクオオカミが小型化した島嶼(とうしょ)型亜種とする考えとが対立している。」
まだ定説はないようです。
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