【犬狼物語 其の四百八】 見つかった犬(狼)のミイラは「ドゴール(Dogor)」
(Baobab trees, Morondava, Madagascar)
「「オオカミから犬への進化途中の種」かもしれないミイラが良好な状態で永久凍土から見つかる」というニュースがありました。
2018年夏、サハ共和国の首都ヤクーツクを流れるインディギルカ川近くの永久凍土層で、1万8000年前のイヌ科の動物のミイラが見つかったそうです。
まるで生きているような子犬のミイラ。(画像は検索すれば出てきます)
いや、まだ「犬」と断定されたわけではありません。もしかしたら「オオカミ」かもしれないし、「オオカミと犬の間」かもしれません。
研究者たちはこの赤ちゃんを「ドゴール(Dogor)」と名付けました。
「Dog or ・・・(犬、あるいは・・・)」という意味かなと思ったら、そいういう意味もかけているのかもしれませんが、「ドゴール(Dogor)」はヤクート語で友人を意味するそうです。
ところで、犬の祖先はオオカミであることは確実なようですが、2015年、イヌが初めて家畜化されたのは、中央アジアあたりらしいという研究発表がありました。米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された研究論文です。
「1万5000年以上前にユーラシア(Eurasia)大陸のハイイロオオカミから進化したイヌが、群れをなして放浪していた野生から、人間の主人の前でおすわりをする家畜へと歴史的飛躍を遂げた場所とそのプロセスをめぐっては、幾度となく議論が繰り返されてきた。」(イヌ家畜化、発祥の地は中央アジアか )
これまでも一部の考古学者の間では、中央アジアがイヌの家畜化の発祥地だろうと考えられていましたが、遺伝学的な研究は初めてらしい。
論文によると、遺伝子の分析結果は「イヌが中央アジア、現在のネパールとモンゴルのあたりで家畜化された可能性が高いことを示唆している」というものです。
この研究でも、オオカミから犬への家畜化は、少なくともユーラシア大陸だし、今回のドゴールの発見もユーラシア大陸ということで、ユーラシア大陸は犬誕生の最有力候補地であるのは舞違いないようです。
DNA解析が進んで、これが犬のルーツに迫ることになったら面白いと思います。ただ、このドゴールは、融け出した永久凍土から見つかったそうで、温暖化が進んだから、というのが気になります。
近年は、永久凍土から多くの動物が発見されて、中には、マンモスもあり、象牙が取引できなくなったことから、マンモスの牙が高値で取引されていて、盗掘が横行しているらしい。
そういえば、前、ボルネオで野生のゾウが見つかったのは、ジャングルがなくなったから、というのがありました。
こういうのを「森の皮肉」と言っていました。
昔ジャングルだったところは、ラワン材を取るために森が伐採され、その後に植えられたのがアブラヤシだそうです。パーム油の輸出のためです。
それで何が「森の皮肉」かというと、ボルネオにゾウはいないと考えられていたのが、ジャングルが伐採されて少なくなったことが、ゾウの発見に繋がったというのです。
また、バオバブの木の独特の姿が分かるのは、周りの木を焼いた(切った)から、というのもありました。
今回の永久凍土からの発見もこれと似ているところがあります。温暖化が進んで貴重なミイラが見つかる、これも「森の皮肉」なのかもしれません。
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