【犬狼物語 其の四百六十七】 東京都大田区 山王熊野神社の「狐碑」
JR大森駅から徒歩20分の高台に鎮座する山王熊野神社を参拝しました。
今回は、狼像探しではないのですが、とはいえ、狼と関係なくもない話です。
というのも、江戸時代にコレラが流行ったとき、くだ狐、アメリカ狐が憑いたことでコレラになるという妄想から、狐をやっつけてくれるのは狼しかないということで、お犬さま(狼信仰・三峯信仰・御嶽信仰)に頼ったという話はすでにしました。
【犬狼物語 其の四百四十】新型コロナウイルスとお犬さま(狼)信仰
佃島の漁師の体から出た化け狐(オサキ狐)を祀ったのが、尾崎稲荷大明神であること、そして、現在の於咲稲荷大明神が、その神社ではないかということも書きました。
でもコレラが流行る前から、元々、狼は狐憑きに効果があるとの信仰がずっとあったということです。(西日本の木野山神社の狼さんもそうでした)
このオサキ狐のことを調べていたら、「東京・湾岸「化け狐」伝説の舞台を巡ってみた!『怪談現場 東海道中』」(https://ddnavi.com/review/407100/a/)という記事を見つけました。そこで大森の「狐碑」の存在を知ったのです。
狐碑の横にあった立て札にはこのようにあります。
この狐人に害をなすこと久し
民みなこれをにくむ
今ここに文久元歳辛酉
御嶽靭矢市正埋めふせぐ
萬世掘ることなかれ
どうも、御嶽の靭矢市正という人物が、文久元年、この化け狐を退治して、ここに埋めたらしい。掘ってはダメだよとあるので、普通の狐ではなかったようです。
靭矢市正(看板:ゆきやいちのかみ、ネット:うつぼやいちまさ)とは、どんな人物か調べたら、天保5年『御嶽山道中記 御嶽菅笠(齋藤義彦作 靭矢市正刊行)』を刊行した御嶽山の神官であった人物のようです。
これで、この狐と狼がつながりました。
『怪談現場 東海道中』の著者は、
「「化け狐」伝説は、幕末期にヨーロッパからやってきた流行り病「コレラ」の恐怖から生じたのではないか、と著者は考察している。確かに細菌やウイルスの類は目には見えない。妖怪の仕業と考えられた、とすれば辻褄があう。」
と書いています。俺もそうかもしれないとも思いますが、コレラと関係なくても、少なくとも狐憑きの化け狐だったのかもしれません。どっちにしろ、狼神社の神官が狐を退治したという話なのではないでしょうか。
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