【犬狼物語 其の五百二十五~五百二十七】山梨県南アルプス市 刈穂稲荷神社&上市之瀬山神社&平岡諏訪神社
刈穂稲荷神社は果樹園の中にあって、境内の台座に載った祠(三峯社か?)の前には、お犬さまの像がありました。
高さは30センチくらいでしょうか。小ぶりながらも狼像の特徴がよく表れています。
ひとつ残念なことに左右の像とも、両脚が無くなっていて、ビニールパイプで代用されています。文化財的には問題でも、信仰的にはまったく問題はありませんが。こういうお犬さまを「文化財」「美術品」「資料」としか見れなくなっていたら、その奥に広がる深遠な世界を知ることはできないでしょう。
街を抜けて山側へ上ります。「中野の棚田」にもほど近いところに、上市之瀬山神社があります。
棚田撮影で何度も訪れている場所で、この神社にも気が付いてはいましたが、ここが山の神を祀る神社であることは初めて知りました。
石祠がいくつかありますが、その中で確認できた「山神」は2つ。
そこから1kmほど離れたところには、平岡諏訪神社が鎮座し、狼像かもしれない古型の狛犬が本殿を護っています。
山梨県は、ニホンオオカミの血を引くと言われる 甲斐犬の故郷です。芦安村(現南アルプス市)には「甲斐犬の里 芦安」があります。
Mnabi Japan「日本犬探訪2 山岳の主 甲斐犬」(https://manabi-japan.jp/culture/20191202_16878/)によれば、
甲斐犬のルーツは、「南アルプス山脈を中心とした山岳地帯に分布した野生の山犬、もしくは山犬と里犬の交配種だと思われる。」という。
「山犬の子を山中で拾ってきたり、発情期の牝犬を山中に繋いでおいて山犬と交配させたりして手に入れた犬を猟師が育てたのが始まりで(略)、元来はニホンオオカミなどと同じ野生動物の血を濃く受け継いでいる犬のようだ。」
金櫻神社を初めとして山梨県も狼信仰が盛んなところでしたが、秩父同様、実際に狼は棲息していた土地なんですね。
だから山仕事をする人たちにとっては、山の神の使いとしてのニホンオオカミは身近な存在だったのかもしれません。実際にオオカミの血を引いた動物が甲斐犬として命脈を保っている、「生のお犬さま」がここにいると思うと魂が震えます。
(余談ですが、東京麹町に甲斐犬好きの人物が建てた「甲斐犬像」があったのですが、去年の2月、地上げ屋によって壊されてしまいました)
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