【犬狼物語 其の五百二十九】山梨県韮崎市 上今井・山神社
山梨県韮崎市上今井の山神社を参拝しました。
道路からいきなりの急な階段が続いています。上りきると、神楽殿や社務所などがあり、さらに奥に進むと、すごい鳥居が見えてきました。
原初の鳥居と言ったらいいんでしょうか。半分朽ちかけて、木の年輪がむき出しになった木製の鳥居です。これだけでもここを参拝したかいがあったというものです。異界への入り口にふさわしい。とくに「なるがまま」の状態が好きなので、これはすばらしい。気に入りました。
そして一番奥には、御腰掛という四角い構造物。真ん中に木が立っています。山の神の依り代のようです。
もともと神社には社殿がなかった、社殿のない神社が本来の形式と考えられているので、これもまた原初の神社を見るようです。「御腰掛」という名前にもその名残を感じます。神様が腰掛けるという意味なのでしょうか。とすると、ずっとそこにいるわけではないということになります。いつかはお発ちになる。だから仮の場所(半永久的な建物ではない)なのではないかなと想像します。
ネリー・ナウマン『山の神』「山の神の住まいとしての木」には、
「青森から鹿児島におよぶ本土全域において、山の神が特定の木に降りると信じられている。こうした木はときに山の神の宿り木、あるいは休み木、腰掛木、遊び木などと呼ばれる。」
とあります。
目的の石像は、「文化十年酉四月吉日」との銘が。山神社に奉納されているので、これも狼像ではないかと言われています。先日参拝した韮崎市中田町小田川・柳原神社の像と似ていて、同じ石工の作なのではないかとも言われているようです。
とぼけた顔は味がありますが、造形的には洗練されたものを感じます。肩から尻にかけては渦巻き模様の鬣(あるいは毛並み)が表現されています。そして渦巻きの太眉も珍しいし、尻尾の造形がまた独特で素晴らしいものです。
御腰掛の横には 鉄製の剣が奉納されています。「○山津○神」(大山津見神)とあります。
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