世界(国際)狼の日
8月13日は「世界(国際)オオカミの日」だそうです。由来を調べましたが、今のところわかりません。「世界」とあるので、外国の何か、オオカミに関する日が由来になっているのかもしれません。ご存じの方は教えてください。
ところで、オオカミの日にちなんで、オオカミの話題です。
上野の国立科学博物館の地球館には、ニホンオオカミとハイイロオオカミの剥製、北海道大学植物園内博物館にはエゾオオカミの剥製が展示されています。
『オオカミは大神【弐】』を出した後、【参】の構想を練っていますが、その中で、狼信仰をアニミズムの痕跡と捉えてみるのは、本のイメージが膨らみます。狼信仰のルーツは縄文に行きつくかもしれません。先日は北日本の縄文文化が世界遺産になったばかりです。
オオカミと縄文人の関係を想像させる資料がいくつか出土しています。岩手県一関市の貝鳥貝塚からは、細長い鹿角の先端にオオカミの頭が彫られた狼形鹿角製品が出土しています。
これは、3年前に開催された東京国立博物館での『JOMON 縄文 一万年の美の鼓動』展へ行って、実際に目にすることが出来ました。
会場内はすべて撮影禁止だったので、この写真はありませんが、長さは25cmくらいでしょうか、細長い鹿の角の先端にオオカミのような動物の顔が彫られて(造られて)いるものでした。
近づかないとわからないほど小さなものです。何に使ったものでしょうか。似たものとして髪飾りがあったので、これも髪飾りなのでしょうか。それとも呪いとか、お守りとかでしょうか。
強いものを身に着けることで、お守りにするということは、世界的にみられることなので、可能性はあると思います。北欧神話では、戦士たちが、戦場におもむく前、狼の血を飲み、肉を食べ、皮をかぶってオオカミそのものになったそうだし、中世ヨーロッパでは、オオカミの爪・歯・毛皮を護符として用いたり、肝臓の粉末を病気や怪我の薬、あるいは精力剤としていたという。
形は違っても狼信仰は西洋にもありました。オオカミに対して人間が持つ「強さ」「神秘」「孤高」など普遍的なイメージなのかもしれません。
その他、千葉県我孫子市の下ヶ戸貝塚からは、オオカミの下顎骨を加工した垂飾品、千葉県千葉市の庚塚遺跡からは、上顎犬歯が加工された垂飾品も出土しています。
このように、縄文時代には、すでに何らかの狼信仰と呼べる片鱗があったようです。
日比谷公園と、味の素スタジアムには、ローマ建設のロムルスとレムスが雌狼の乳で育てられた伝承にちなんだ、オオカミ像のレプリカがあります。ローマ時代、狼は聖獣であり、神殿、墓碑、モニュメント、貨幣にその姿が使われていました。
その後、西洋では狼は負のイメージで語られるようになるのですが、それはどうしてなのでしょうか。ミシェル・パストゥロー著『ヨーロッパから見た狼の文化史』によると、
「ひとつの説は、狂犬病が西洋で猛威をふるっていた期間が長かったため、それによって狼たちの行動が変化し、より危険なものになったとする。(略) 5世紀から10世紀にかけて気候が変動して飢餓や疫病が増し、人口も減り、耕作地の大部分が荒廃し、林や森、荒地が増加した。
その結果、野生動物も飢えをおぼえ、村の周囲を徘徊して、人間界により近く、より脅威的なものとなった。狼に対するこうした新たな、だが如実な不安や怖れは人間の態度や考えを変えた」
それで狼は負のイメージをもたれることになったらしいのです。典型的なイメージが「赤ずきんちゃん」の狼像ですね。こうして負のイメージは21世紀まで受け継がれました。
現在では、エコロジー、自然環境、生物多様性の観点からも、狼に対するイメージも良いほうに変わってきています。
ところで、味の素スタジアムに建つ「カピトリーノの雌狼」の右後ろ足にはえぐれたような「傷」の表現があって、何か由来があるのかと調べましたが、今のところわかりません。
勝手に解釈すれば、このくらいの怪我でひるむような動物ではない、ということも意味しているのかもしれません。怪我は優秀な戦士の勲章かもしれないのです。
もしどなたか、この「怪我」の伝説をご存じでしたら教えていただけるとありがたいです。
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