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2021/09/01

【犬狼物語 其の五百七十四】 東京都世田谷区 代田広場の狐塚之霊碑

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先日、撮影で世田谷区へ行くことがあり、そのとき、近くに「狐塚」があることがわかりました。なんとなく、ピンとくるものがあり、知った以上は寄るしかないだろうな思い、仕事終わりに代田広場へ行ってみました。

狼信仰にゆかりの場所を調べていると、時々「狐」に行き当たります。

それは、もともと狐憑きには狼が効くといった信仰があったし、江戸時代のコレラ禍でもそうだったように、コレラの原因が、異国から来た妖狐にとりつかれたからという妄想から、狐に勝てるのは狼しかいないということになり、三峯神社など、狼信仰に頼ったという経緯がありました。そのことについては何度も書いているし、『オオカミは大神 弐』でも詳しく書いています。

それと狼信仰が盛んになった江戸時代よりずっと前は(おそらくは縄文時代から)、アニミズムとしての狼信仰だったようですが、時代が下って、狼が狐に置き換わったという説もあり、狼信仰と狐信仰は関係あるようなのです。

『日本書紀欽明天皇紀』には「秦大津父(はたのおおつち)」の話があります。

要約すると、

商人であった秦大津父は、山道で、二頭の狼が血を出して争っているのを止めました。「汝は、これ貴き神」と呼びかけ、もし猟師に見つかったら捕らえられてしまうからと、咬み合うのを止め、血に濡れた毛を洗いぬぐって、両方とも無事に放してやりました。その後、天皇が不思議な夢を見て、秦大津父を探し出し、大蔵省(おおくらのつかさ)に任じました。

と、いった話です。

そしてこの秦氏にはこんな話もあります。

伏見稲荷大社の「社伝によれば、渡来系・秦氏族の秦伊呂巨具(はたのいろこぐ)によって和銅4年(711年)創建という古社」だそうで、稲荷神社の創建にもかかわっています。狼を「貴き神」と呼びかけたのも秦氏です。ここでも狼と狐の関係がありそうです。

狼から狐に変わっていったというのは、今のところはっきりしませんが、狼に狐の影がちらちらしているのは間違いありません。

ところで、この代田広場の「狐塚之霊碑」ですが、「碑」のつくりが「界」に見えますが、「碑」なんでしょうね。Google Mapには「栗原稲荷神社跡」とあるので、昔は稲荷神社が鎮座していたらしい。今は、児童公園になっていて、真ん中にこの碑が建っているだけなので、意味を知らないと、明るい公園といった雰囲気です。

でも、碑の内容はおどろおどろしいものです。これは病気の人々に憑いた狐を行者が祓って封じ込めた記念碑のようです。もしかしたらこの塚の中にくだんの狐が封じ込められているのかもしれません。

世田谷区生活文化部文化課発行の『ふるさと世田谷を語る』には、

「この公園の中央には高さ一メートルほどの「狐塚の碑」と書かれた碑が建てられています。これは、昔この辺りが雑木林やスギ、マツ、ヒノキ、キリ、ウメなどの林、竹やぶなどの多かった所で、キツネ、タヌキ、イタチ、ノウサギなどが住みついていた場所であることと関係あるのです。
 これら小動物の中で、キツネは稲荷信仰の神使として稲荷神社では大切に祀られていましたが、その一方で悪さをしたりする動物でもありました。
 明治五年頃、この栗原では、病気になったり、不慮の事故にあったりする人が続出しました。行者にみてもらったところ、これはキツネに取りつかれたためだということになりました。そして行者の祈祷によって、人間に取りついたキツネの魂を引き離して、稲荷神社の境内に封じ込めたのです。狐塚の霊碑は、キツネの霊魂を祀った石碑なのでした。
 今でも地域の有志の人々によって、建碑の明治三十二年三月六日に因んだ毎年三月六日には、交代で供物を捧げ、お参りしているということです。」

碑の後ろ、碑文の写真でも確かめてみましたが、「馬込」「御嶽」と書いてありました。こちらのHP「武蔵野・多摩MTB散歩」の「狐塚之霊碑」(http://nobish.html.xdomain.jp/2669fox.html)

にも、「馬込村の御嶽神社から人を呼んで御祓いをしてもらった記念碑」とあって、「行者」は、御嶽神社の関係者だったらしいです。つまり、お犬さま(狼)で、狐を祓ったようです。

だからここも狼信仰由来の場所といってもいいでしょう。

 

 

 

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