【犬狼物語 其の五百九十九】「大口の 真神の原に 降る雪は」
「大口の 真神の原に 降る雪は いたくな降りそ 家もあらなくに」(舎人娘子)
(大口の真神が原に降る雪はひどく降らないでほしい。家もないというのに)
この万葉集の歌碑が奈良県立万葉文化館にあります。狼を「大口の真神」と呼んだ最古の文献の一つとされているものです。「大口」は「真神」の枕詞です。真神(狼)の口が大きいので枕詞になったようです。
また『大和国風土記逸文』には、昔、明日香の地に老いた狼がいて人を食べた。土地の人は恐れて大口神と言ったとあります。
「真神が(の)原」は、『万葉集事典』(中西進編)によれば、
「明日香村飛鳥の飛鳥寺(安居院・飛鳥大仏)を中心とした一帯の地。甘橿丘陵の東方、飛鳥川に沿う南北にわたる平地」
だそうです。
飛鳥寺の周辺には田畑が広がっています。一番上に掲載の夕暮れの写真は、川原寺跡付近で撮影した「真神の原」です。
なお、「真神の原」から少し山へ入った飛鳥川の上流には、日本の棚田百選にも選ばれている「稲淵の棚田」があります。
稲淵の棚田は、何度も訪ねているところです。ここでまた、「狼」と「棚田」が交差しました。
| 固定リンク
コメント