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2022/09/30

【犬狼物語 其の六百二十四】何の音?

 

『日本民俗文化大系1 風土と文化』千葉徳爾「第一章 日本の民俗と自然条件」には、このようにあります。

「イヌが遠吠えするのをタチナキといって、これをしているのは何か人の目にみえぬ精霊の姿をみて吠えているのだとして警戒心を強めるのである。タチナキのタチは夢枕にタツとか落雷をカンダチというのと同じく、霊が出現する場合をいう言葉である。」

イヌは音や匂いに敏感であることはヴィーノを見ていて、常に感じていることです。これまでも、イヌはあの世とこの世を行き来する存在、「自然への窓」とも表現してきました。

イヌを飼っている人は「家族」とは言っていますが、家畜化されたとはいえ、完全に人側にいるわけではなく、やはりどこかわからない部分があります。野生が残っています。異界と人間界を行ったり来たりしているのではないか、そんな神秘的な存在にも思えます。

家畜化されていないオオカミならなおさらです。山に棲むイヌ(ヤマイヌ=オオカミ)は、それこそ山の神さまの使い、という地位を与えられても不思議ではないでしょう。山の神さまは見えないものですが、オオカミの姿を通して、神さまの存在を感じることができたのではないか、と思います。

マイケル・W・フォックス著『オオカミの魂』には、 

 「オオカミは野生状態の象徴的な存在、つまり野生に対する意識の元型になっています。」

「自然は、わたしたち人間が健全さと文明を取りもどす最後の望みなのかもしれません。そしてオオカミはわたしたち人間にとって、高貴な野蛮人といういくぶん空想的な存在よりもずっと現実的で、実際により適切でもある水先案内人、元型となりうるのです。」

「元型」とあるのは、フォックスの心理学的な考察からきた言葉でしょう。たしかに、西洋でも、現在では(昔は違ってました)、オオカミは自然に対する「元型」というのはわかるし、日本での原初の狼信仰も、もともとは「元型」であることから生まれたのではないかと思われます。

 「元型」とは、心理学者ユングが提唱した概念。「集合的無意識で働く人類に共通する心の動き方のパターン」といった意味。代表的なものに「太母」「老賢者」などがありますが、「オオカミ」もそうなのではないか、ということです。

西洋でも、モンゴルでも、日本でも、さかのぼればさかのぼるほど、狼信仰に共通したイメージを感じられますが、そこが「元型」といわれる所以でしょう。人間に共通の「元型」なのではないかと思います。

 

 

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2022/09/28

今日から二十四節気「秋分(しゅうぶん)」、七十二候「蟄虫坏戸(むしかくれてとをかくす)」

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今日から二十四節気「秋分(しゅうぶん)」、七十二候「蟄虫坏戸(むしかくれてとをかくす)」

「蟄虫坏戸」は、虫が土中に掘った穴をふさぐ、といった意味。

写真は、 兵庫県多可町、岩座神の棚田。

加美区にある344 枚の棚田で、岩座神という名前が印象的です。集落の上部を走る道路から俯瞰する日本家屋と棚田が一体となった景観はすばらしい。江戸時代の初めに積み上げられたという高い石垣が残っています。

 

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2022/09/08

2022年9月10日は、中秋の名月

100910(これは2018年の「中秋の名月」)

 

新暦で生活している日本人ですが、1年に何度か、旧暦を意識せざるをえない日、というか、旧暦でないと意味がない行事、というものがあります。

そのひとつが「中秋の名月」。今年は新暦9月10日です。

中国では「中秋節(チョンチゥジェ)」、韓国では「秋夕(チュソク)」といって、祝日にもなっていて盛大にお祝いします。

秋を初秋(旧暦七月)、仲秋(旧暦八月)、晩秋(旧暦九月)の3つに分けますが、「中秋の名月」は、「秋の真ん中」=「旧暦八月十五日夜」のことです。だから旧暦で生活していれば、毎年、「中秋の名月」は八月十五日で日付は固定されています。

あくまでも「名月」です。「満月」ではありません。たまたま「満月」の年もありますが、基本的には月はどこか欠けています。「満月」でなくても「名月」です。いや不完全の美を愛する日本人には、「満月」ではないからこその「名月」なのかもしれません。

ところで、先日、オンラインで「令和5年版 旧暦棚田ごよみ」の会議をやりました。来年は閏年なので、13か月あります。なので、表紙の棚田と合わせて、14点の棚田写真を選びました。

文章とキャプションも提出したので、あとはできるのを待つだけです。

令和5年版は、雪景色が3点も入っています。これは今までで一番多いのではないかと思います。水の張った初夏の棚田やまっ黄色の秋の棚田もいいですが、雪景色の凛とした雰囲気も好きです。

 

 

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