【犬狼物語 其の六百二十七】埼玉県越谷市 香取神社の子安犬
香取神社にも「安産の石」が置いてあります。子安信仰の丸い石です。撫でると子どもに恵まれるという言い伝えがあります。
ここ何年か、お宮参りとかお食い初めの写真撮影を依頼されることも多くなり、そこで、この産育に関しての「犬」と「石」の信仰というものに興味が出てきた話は前にも書きました。
ここが特徴的なのは、子安信仰の犬像と石がいっしょに置かれていることです。
新谷尚紀著『生と死の民俗史』「境界の石」「産育の石をめぐる民俗心意とその儀礼的表現のメカニズムには、
「同じく小石を身近におきながら妊娠、出産、育児の各段階でそれぞれ民俗としての意味づけが異なっているという点である。出産以前においては、子授けや安産、出産前後には産神、離乳のころには歯がため、というふうにである。」
子産石とは自然石で、長い年月をかけて海の波で削られて丸くなり、本体の大岩から分離してできたものだそうです。あるいは川に流されるうちに丸くなった石もあるでしょう。
どれも、まん丸で、見た目だけでも「普通じゃない、特別の石、珍しい石」と思うのですが、大きな岩から「生み出された」という生成の経緯を聞くと、なおさら丸い石が子授け祈願と結びつくのが分かるような気がします。
石は子供の成長とともにその役割を変えていきますが、離乳時には、「歯固めの石」として使われます。香取神社には、白い「歯固めの石」も置いてあります。
香取神社 には何度か参拝していましたが(仕事も含めて)、あらためて、子安信仰における石の役割の段階が目に見える神社だったんだなぁと気がつきました。
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