『この世とあの世のイメージ 描画のフォーク心理学』
やまだようこ 、 戸田有一、 伊藤哲司 、加藤義信 著『この世とあの世のイメージ 描画のフォーク心理学』です。
「この世とあの世のイメージ」を、日本、イギリス、フランス、ベトナム4か国の大学生2040人が描いた描画を比較したものです。
あの世のイメージが「上(天)」にあるというのはだいたい共通しているようですが、ベトナムだけは、「下(地)」にイメージしている人が多いらしい。そのかわり、死後の世界がないというイメージを持つのもベトナム人には多いようです。
それはベトナムでは、社会主義的な教育が唯物論的な観点で行われているから、という解釈と、もうひとつ、近代化途上の国では科学を信じているのに、日本、イギリス、フランスでは、むしろ近代科学の限界を感じているとも解釈できるのでは、という。
意外だったのは、万物に霊魂が宿るアニミズム的世界観が、イギリス、フランス人にもあることです。それはキリスト教が入ってくる以前の信仰で、基層部分に今でも流れているということ。
先進国では、農村社会の古い共同体は解体し、宗教意識も低くなっているにも関わらず、他界の存在や魂の存在は否定されていません。「宗教以前」と考えられるような、アニミズム的世界観は、人類共通なのかなと思います。
本の「はじめに」にはこのようにあります。
「人々が描くイメージは個々に個性的であり、どれひとつとしてまったく同じものはないが、しかしまた驚くほど共通性も高かった。それは想像世界といえどもまったく自由にどのようにもイメージできるわけではないことを示している。」
イメージは、各自が勝手に作り上げているのではなく、人類共通の法則みたいなものがあるということなのでしょう。自分では「独創的」と思っているようなアイディアやイメージも、その人個人のものかどうかは微妙です。
こういったことはたぶんユング心理学でいうところの「集合的無意識」「元型」に通じるかもしれません。共通の部分がなければ臨床の場でイメージを使ったセラピーも行えないだろうし。
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