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2023/07/28

 河合隼雄著『ケルト巡り』の渦巻き模様について

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河合隼雄著『ケルト巡り』を読みました。

河合氏のNHK番組企画としてのアイルランドの旅を書籍にしたものです。

ケルトについては以前から気になっていて、とくにケルト音楽は比較的よく聴いていたし、あるオーストリアのケルトの遺跡が、まるで日本の神社を思い起させるようなたたずまいに、日本と何か通じるものがあると思っていたのですが、この本を読んでみて、それが自然崇拝やアニミズム的宗教感で、日本とケルトはつながっているんだなぁとあらためて思いました。

それと、ローマから離れた遠い島国のアイルランド。一方、中華文明から遠い島国の日本。地理的な類似性からも、どちらにも古い文化が残りやすい共通項があったようです。

よく、西洋と日本は対比されて論じられますが、キリスト教が入る前の西洋は、むしろ、共通するところが多いようにも思います。いや、西洋というのではなくて、これはもっと人類共通の、原初的な宗教感なのかなとも思います。もちろん、地域差はあって、見た目はだいぶ違うのですが。

「ケルト文化の特徴としての、渦巻きの存在はよく知られている。ケルトでは、渦巻きは「アナザーワールド」への入り口とされていた。」

「これは世界共通の認識なのだが、古代から渦は、偉大なる母の子宮の象徴と考えられてきた。そしてそれは、生まれてくるという意味と、そこに引き込まれて死ぬという、二つの意味を併せ持っている。ポジティブな面とネガティブな面を持つ。まさに輪廻転生を象徴するものなのだ。日本の縄文土偶の女神には渦が描かれているものが多いし、世界でも、守護神にはよく渦の文様が彫られている。つまり母性の象徴なのである。」

この渦巻き文様を見ていると、どうしても、蛇がとぐろを巻いている姿とダブります。蛇もまた子孫繁栄、生命を司るもの(神)として、日本では(外国でも?)信仰されてきました。例えば山自体がご神体であると言われる三輪山も、蛇がとぐろを巻いている姿だという説もあるようです。それと先日にも書きましたが、鏡餅なども、蛇がとぐろを巻いている姿を模したものという説があります。この渦巻きは何か蛇と関係するのでしょうか。

蛇が渦巻きに似ているのか、渦巻きが蛇に似ているのか、どっちなのかはわかりませんが。

河合氏が言う「渦巻きは母性の象徴」ということと、蛇がとぐろを巻いている姿の意味は、 大きな意味で同じことをあらわしている、ということになるのでしょう。命の根源が渦巻きで象徴されているのではないかということです。

さらに想像を膨らませれば、夏に多い盆踊り。中国南部のミャオ族などの踊り。これもまた渦巻きの形と言ったら言い過ぎでしょうか。輪を作り移動しながらの踊りを、上から見たら、渦巻きを描いているようです。

また、上に掲載のろうけつ染(蝋染)2点は、昔、中国貴州省のプイ族村のろうけつ染めの女性に弟子入りして、伝統的な模様を描いたものです。プイ族も、渦巻き模様を多用しています。

当時、渦巻きにどんな意味があるかプイ族に尋ねた記憶もあるのですが、忘れてしまいました。

 渦巻きが生命の根源、永遠、輪廻転生などを表すということは、たしかにそうなんでしょう。ただ、自分がプイ族で渦巻きを描いたり、マレーシアで、バティックに蛇で円環を描いた経験から、「描きやすい」「描いていると気持ちが落ち着く」ということが実際あるわけです。ユングが無意識に曼荼羅を描いたということと似ているのかもしれません。

だから渦巻きの「意味」は後付けで、もっと直感的な形(=無意識の形)である可能性もあるんじゃないかと考えます。 

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