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2023/08/03

【犬狼物語 其の六百七十八】「イヌ」の始まり(2)

_mg_9987(国立科学博物館 ハイイロオオカミの眼。視線強調型)

_mg_2636(山梨県上野原市犬目宿 ヴィーノの眼。黒目強調型)

オオカミとイヌの違いは何かというと、いろいろありますが、たとえば目。オオカミは視線強調型であるのに対して、イヌは黒目強調型。

オオカミに比べて、全体的にイヌは丸っこく、体に対する頭の大きさも大きい。

オオカミは遠吠えはしますが、吠えることはなく、一方のイヌは吠えます。

オオカミは人間の意図を察することはありませんが、イヌは人間の意図を察して行動します。

オオカミは人間に懐くことはありませんが、イヌはもっと穏やかな性格で懐きます。

などなど、いろいろあります。昨日は、オオカミからイヌが分岐するとき、長年、何世代にもわたって、オオカミは人間の周辺で「野犬」のような状態で暮らしたのではないか、その中で、オオカミはもっと人間に近づく方法として、自分の姿を変えていったと思われると書きました。

どういうことかというと、「野犬」状態の環境の中で、イヌ的な突然変異がオオカミのある個体に現れたということなのでしょう。ただ、その変異は、1頭のオオカミにすべてのイヌ的変異が同時に現れたのではなく(1頭のオオカミが突然イヌになったわけではなく)、各変異が現れた個体はおのおのばらばらで、しかも、その変異が現れたのは「有利」だからはなく、ほぼ偶然、そういう変異が突然に現れたということにすぎなかったでしょう。

でも、その変異、たとえば黒目が増した個体、体に対する頭の大きさが大きい個体の方が幼く見えて、人間に脅威を与えず、人間が保護しようとして生き延びるチャンスが増したとは言えるでしょう。黒目になったり頭が大きくなったりという遺伝子頻度が高くなったと考えられます。

他の変異についてもそうです。「野犬」状態の環境下では、オオカミがイヌ的変異を持った個体の方が生き延びたと思われます。そうしてその変異は何世代ものうち固定され、変異は遺伝するようになりました。オオカミからイヌに変わるために、何世代、何年必要なのかはわかりませんが、だんだん「イヌ」に変わっていったということなのでしょう。ただし、オオカミとイヌの間の化石がほぼ見つかってないということなので、このイヌ化は意外と速く進んだ可能性もあります。

ここまでは、人間側からみたイヌの進化ですが、同様に、イヌからみた人間にも進化があったのでしょうか。

人間の中にも、オオカミを怖がらない個体が現れ、野犬状態のオオカミと友達になった個体、あるいは、狩に出たとき、オオカミを使えばもっと狩が楽になることを知った個体などあったかもしれません。たとえば外敵の接近を知らせてくれる野犬状態のオオカミをそばに置くことで、外敵に怯えるストレスは多少なりとも軽くなったなどはあったのではないでしょうか。

オオカミをそばに置いてもいいと思う個体は、そうでない個体よりも有利になったかもしれません。このように、人間側にも、形質的な進化というより、心理的な進化が起こったとしても不思議ではありません。

オオカミがイヌになることには、人間とオオカミの双方にメリットはあったと思われます。

 

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