【犬狼物語 其の七百二十四】「お犬さま」「狼さま」とユング心理学
今年の放送大学では新規講座「イメージの力('24)」も受講しようと思います。
イメージを重視するユング心理学は「お犬さま」「狼さま」と相性がいい。「お犬さま」「狼さま」もニホンオオカミが元になったイメージという側面もあります。(というか、そう解釈しています) だからこの「イメージの力('24)」は俺にはドンピシャな講座です。
全国の狼信仰を追っていると、狐憑き・犬神憑きなどの話が出てきます。特に西日本で。
兵庫県の神社では、ある女性が狐憑きになることがあり、それを祓う目的もあって、その神社の狼さま周辺をきれいにするようになったと、具体例も聞いています。
今では狐憑き・犬神憑きは、精神疾患のひとつとして考えられている症状ですが、心理臨床の場面でもイメージを用います。
昔、「憑き物を祓うのが狼」というのも、「犬神や狐よりも狼は強い」という信仰をみんなが持っていたから祓えていたのだろうと思います。日本最強の動物、「お犬さま」「狼さま」のイメージです。
目に見えない病気や災いも、犬神、狐という具体的な目に見える形に置き換え、また、それを祓う方も、狼という具体的で最強の動物をイメージすることによって、より祓いやすくなるということではなかったかと思います。そして、病気や災いの元凶である犬神や狐を、その患者の体内から追い出し、場合によっては、「よりまし」に一時的に移らせて(憑かせて)、それを遠くに捨て去るということで憑き物を治していたのではないでしょうか。大事なことは、憑かれた人が納得できる物語でなければならない、ということです。
そしてここでは「目に見える形」というのも重要なのではないかと考えます。「目に見える形」とは言っても、現物でなくてもいい、脳内での「見える形」、すなわちイメージです。
目に見えないものは、怖いし、どう扱ったらいいかわからないものです。どんな形であれ、目に見えるものなら、扱いやすくなり、効果百倍です。
昔、憑き物を落とすために「憑かれた人が納得できる物語」がなければならなかったならば、現代の「納得できる物語」とはどのようなものでしょうか。
狼が直接的に病気や火事や 盗難を防いでくれると本気で信じている人はほとんどいないでしょう。狼がいないので害獣除けもありません。
そしたら、狼が持っている現代のイメージとは何でしょうか。人によってさまざまでしょうが、強靭、神秘、孤高、自然、あたりでしょうか。
それが「納得できる物語」であれば、現代の狼信仰がどんな姿なのか、おぼろげながら見えてくるというものです。
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