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2024/02/07

【犬狼物語 其の七百二十二】江戸時代中期の二ホンオオカミの呼び名

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江戸時代中期のイヌ属の名称を知ることができる『享保元文諸国産物帳』(1735年~1776年)には、二ホンオオカミと思われる名称も載っています。『諸国産物帳』はすべて見つかってはいませんが、面積的には日本全土の4割をカバーしているという。

以下、中村一恵「江戸中期・諸国産物帳に記載されたイヌ属動物の名称」を参考に、呼び名と件数を書いてみます。(×)内の数字が件数です。

これでわかるように「狼」というのが一番多いのがわかります。次が「山の犬」。

「幕府によって編纂・集成された文献は現存せず、藩などに残された「控」が保存されているものについて資料が復元されている。」(wiki)とあり、「おいぬ」が1件だけというのは、関東地方と東北地方の「おいぬ・おいぬさま」地域の『諸国産物帳』が未発見で、あくまでも残されている地域の『諸国産物帳』内での結果なので致し方ありません。

ちなみに、備中の学者、古川古松軒は、天明八年(1788)に現登米市米川の狼河原(おいのかわら)を通りました。「おいの」や「おいぬ」と呼んでいた地域がこの時代もあったのは確かです。

完ぺきではないにしても、当時の呼称の分布はある程度分かるので、貴重な資料に間違いありません。

 

狼(34)、大かめ(2)、おふかめ(4)、おほかみ(6)、おふかみ(1)ヲヽカメ(2)、ヲヽカミ(1)、をうカミ(1)、ヲウカメ(1)。

おいぬ(1)、大犬(2)、大いぬ(4)。

山いぬ(6)、やまいぬ(4)、山犬(3)、山のいぬ(3)、やまの犬(1)、山の犬(11)、ヤマイヌ(6)、山狗(1)、犲または豺(10)。

 

 これだけ呼び名にバリエティがあるというのも面白い。大きな犬だから「おおいぬ」「おいぬ」、山に住んでいる犬だから「やまいぬ」「やまのいぬ」、これは分かりやすい。

じゃぁ、「おおかみ」「おおかめ」はどうなんでしょうか。この論文「江戸中期・諸国産物帳に記載されたイヌ属動物の名称」によると、「おおかめ」の場合、「大」+「かめ」らしく、「かめ」は「いぬ(犬)」の古語だそうです。参考までに「『東日流外三郡誌』に古代津軽弁の一つとして、犬のことを“カメ”というと記されている。」(古賀達也「“カメ”(犬)は「外来語」か」より) だから「大きないぬ」という意味らしい。そしてkameからkamiへ変わるのは容易だったという説のようです。

ところで、これを地図にポイントしたものを見てみたい、と思うのは、俺だけではないはずです。地図にしたらもっとニホンオオカミの呼称分布状態がわかるのではないでしょうか。そのうち作ってみたい。

 

 

 

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