【犬狼物語 其の七百六十九】「狐の穴」というもの
王子稲荷神社の一番奥まったところは崖になっていますが、階段が続いていて上に上れます。崖には穴らしきものがあり、たくさんの狐像が置かれていて隣には祠も祀られています。(写真:1番目)
これは「お穴様」といい、かつての狐の棲家だったという。
先日参拝した上野の神社も「穴稲荷」で穴があったし、品川神社の阿耶稲荷も「穴」稲荷で巣穴らしき穴がありました。他にも都内の稲荷神社には多くの「お穴様」があるようです。
穴は、かつて狐の棲家だったという説明が多いのですが、それだけなんでしょうか。穴は古墳の横穴墓穴という説もあるようです。
どうも、「穴」自体がご神体のようにも見えてくるし、初期の狐信仰と何か関係があるのではないか、という予感が。
小泉八雲の『知られぬ日本の面影』にもは、
「殆どあらゆる稲荷の背後に、社祠の壁の地上一、二尺の邊に、直径約八寸の圓い穴が見出される。往々それは引き板によって、自在に閉められるやうに作ってある。この圓孔は狐の穴で、その中を覗いて見ると、恐らくは豆腐叉は狐が好むと想像される、他の食物が献げてあるだらう。」
とあります。
そうです。八雲が書いているように西日本では別な形の「穴」が目立つのです。
西日本の狼信仰の神社を周っていて気がついたのですが、稲荷神社の社に直径10数センチの穴が開いているのを何度か見ています。(写真:2番目)
いや稲荷神社だけではなく、狼信仰の奥御崎神社の社にも穴(写真:3番目)が開いていたし、別な神社にも開いているところがありました。
奥御崎神社の場合は、社殿の穴は北西の方向に開いていますが、狼信仰の本社である船上山を向いているともいわれます。穴は狼さまの出入り口で塩を投げ入れるとご利益があるそうです。
また、ある神社の場合は、中を覗いたら狼像が置いてありました。
これら西日本の「穴」と東日本の「穴」は同じ意味なんでしょうか。そしてこの穴は何を意味するんでしょうか。
全国の稲荷神社の総本宮である伏見稲荷の宮司中村陽氏監修の『稲荷大神』には次のようにあります。
「稲荷社を巡礼して早々に気づかされるのが、狐塚の存在だ。社祠の裏に狐塚が築かれたり、あるいは狐塚の上に祠が建ってたりする。そしてそれらの多くには、穴らしき窪みが穿たれている。この穴は伏見稲荷大社の裏山に通じるなどと伝えられる一方、”穴”から霊狐が出現し、御利益をもたらすと喧伝され、流行り神となった霊蹟もひとつやふたつではない。狐塚はミニ稲荷山にほかならず、その穴は御利益の源泉にして稲荷神界と通じる神秘の回路だったのである。」
これは狼信仰にも関わるような気がするので、これから調べてみたいと思います。
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