都会の狼像
狼像が山間部の神社の前に立っているのは魅力的です。山の神・山の神の眷属としての狼がいるべく場所としてふさわしい。ある意味、そこにいるのは自然です。
一方で、大都会の中に立つ狼像は意外性があって面白い。高いビルの間に立つ狼像は特に印象的です。知らなければ通り過ぎてしまうような場所です。「なんでこんなところに?」と思ってしまうでしょう。俺もそうでした。でも考えてみれば、ビルの間に狼像が立ったわけではなく、狼像の周りにビルが立ったということです。このビルで狼像が隠されてしまったというのが都会の状況です。
狼信仰は現代においては、特に都会では、見えない人には見えず、見える人にだけ見えるという状況かもしれません。
たとえて言えばgoogle mapレイヤーみたいなものです。俺もgoogle mapに狼像のレイヤーを設定しています。狼像のレイヤーを外せば一瞬で見えなくなります。そして狼像の無いレイヤー内を、水平に移動したとしても、どこまで行っても狼像には出会えません。
この狼像のレイヤーに気がつくには、縦方向の移動が必要です。そして気がついたら最後、今度は狼像だらけのレイヤー内を歩くことになります。
文化は重層的です。レイヤーが何枚も重なった世界です。水平方向だけの移動では全体が見えません。特に都会では状況が複雑すぎて全体が見えづらい。そんな中で、都会の狼像はひとつのきっかけを与えてくれます。
地方ではあまりに自然すぎるので通り過ぎてしまいますが、都会では逆に意外性が強烈な印象で、「なんでここに?」と今まで見えなかったものに突然気がつくということではないかなと思います。今まで見てていた世界が違って見えてきます。
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