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2025/10/02

あらためて今『茶色の朝』

170902

 

フランク・パブロフ著『茶色の朝』という、約20数年前、フランスでベストセラーになった物語があります。西ヨーロッパ全体に広がっていた極右運動への危機意識から書かれた物語でした。

「茶色以外のペットは処分するように」という法律を皮切りに、少しづつ周りが茶色に変わっていくのですが、主人公は、半分は疑いながらも、「茶色に守られた安心、それも悪くない」と思い、まぁいいかとやり過ごしていると、突然、自分がその茶色にとらえられそうになって、初めて危機を理解するというもの。

「茶色」とは、フランス人にとっては、ナチスをイメージさせる色だそうです。

心理学には、「チェンジ・ブラインドネス(変化盲)」というのがあります。たまにテレビの「脳トレ」などでも行われるテスト、いわゆる「アハ体験」で、静止画の一部がだんだん色や形が変わっていくものですが、意外とそれに気が付くのは難しいというテストです。

ゆっくりした変化は気が付きにくい。でも、気が付いたときには取り返しがつかない状態になっているという怖さもあります。『茶色い朝』もその怖さの物語です。

ナチスがなぜ支持されたのか?

ナチズムは大量虐殺で「極悪」のイメージですが、当初ナチズムは、人間の理想形を求める思想でもありました。タバコやアルコールの害について啓蒙し、健康増進運動を展開、菜食主義や自然に親しむこと、子供を母乳で育てることの勧めなど、これだけ聞けば、なんて理想的な社会を目指しているんだろうと思ってしまいます。

だったら、これは良いことなのではないかと思うようになります。徐々に、徐々に。でも、それとセットになっているのが理想形から外れたものの排除でした。

行きつく先は、自分が抹殺されるということです。なぜなら、みんな、誰ひとりとして「理想形」ではないからです。

いや、そもそも人間の「理想形」などというものはありません。

 

 

 

 

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