カテゴリー「環境・自然」の181件の記事

2025/11/28

【犬狼物語 其の八百十一】心理学から見る狼信仰ー「元型」としての狼

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狼信仰は害獣の鹿や猪除けとして、主に農業関係の守り神としての信仰から始まったとされますが、それはあくまでも江戸時代に盛んになった理由です。

でも、狼信仰自体は、ずっと古く、おそらく太古の時代に狼とファーストコンタクトがあったときから始まったのではないでしょうか。

縄文時代ではどうかというと、狼と縄文人の関係を想像させる資料がいくつか出土しています。東京国立博物館で開催された『JOMON 縄文』でも展示されましたが、岩手県一関市の貝鳥貝塚からは、細長い鹿角の先端に狼の頭が彫られた狼形鹿角製品や狼の犬歯や下顎骨に穴を開けた垂飾品が見つかっています。千葉県我孫子市の下ヶ戸貝塚からは、狼の下顎骨を加工した垂飾品、千葉県千葉市の庚塚遺跡からは、上顎犬歯が加工された垂飾品も出土しています。 

このように、なんらかの狼信仰と呼べるような片鱗が見えます。

これは日本だけではなく、世界的に見ても、狼の骨などは力の象徴、魔除けとして身に着けられたようです。

そこでこの狼に対する人間の共通した信仰はどうして生まれたかについて、マイケル・W・フォックス著『オオカミの魂』の中で、「元型」という言葉を使っています。

フォックスはイヌ科動物の権威。心理学、行動学の博士号を取得して『イヌの心理学』、『イヌのこころがわかる本』などの著書もある生態学者・獣医師です。

この本は、単なるオオカミの生態・行動を紹介した本ではなく、行動学、心理学、哲学、社会科学など幅広い領域の成果をもとに、現代の人間が抱える精神的な問題に踏み込んだ本です。オオカミだけではなく、あらゆる生き物への畏敬の念の大切さを訴えています。

フォックスはこのように言っています。

「オオカミは野生状態の象徴的な存在、つまり野生に対する意識の元型になっています。」
「自然は、わたしたち人間が健全さと文明を取りもどす最後の望みなのかもしれません。そしてオオカミはわたしたち人間にとって、高貴な野蛮人といういくぶん空想的な存在よりもずっと現実的で、実際により適切でもある水先案内人、元型となりうるのです。」

「元型」とあるのは、フォックスの心理学的な考察からきた言葉でしょう。

「元型」は心理学者ユングが提唱した概念で、人間の心は「意識」→「個人的無意識」→「集合的無意識」と階層を作っていますが、もっとも深い所にあるのが人類共通の「集合的無意識」です。「元型」とは「集合的無意識で働く人類に共通する心の動き方のパターン」といった意味です。

代表的なものに「太母」「老賢者」などがありますが、「オオカミ」もそうなのではないかというのです。

人類が長い間、狼との接触によって、DNAに刻まれた”記憶”のようなものが「元型」となり、狼に対する共通したイメージを作るのかもしれません。

狼信仰についていろいろ調べていく中で、西洋でも、モンゴルでも、日本でも、時代をさかのぼればさかのぼるほど、狼信仰に共通したイメージを感じられたので、それがどうしてなのかという疑問を持ってきました。そのひとつの解釈として、心理学から見た狼信仰のルーツということで、「元型」を用いると、個人的に腑に落ちるということなのです。だからこれが「正解」なのかはわかりません。

「元型」という用語は難しくもあるので、精神世界における本能のようなものと言い換えてもいいかもしれません。民族や時代に関わらず人の心は狼に対する同じようなイメージを生み出すということです。

それでは今話題の熊についてはどうなんだという話ですが、熊も「強さ」に関しては狼に引けをとらないので、熊も「元型」となっているのかもしれませんが、もしかしたら棲息範囲が狼ほど広くはなかったと思うので、「元型」になるほどではなかったのかもしれません。以上、熊については詳しく調べたわけではないので、あくまでも憶測です。

さて、日本では狼信仰はその後どういった経緯をたどったのでしょうか。

先日の飯能市立博物館での西村敏也先生の講座「秩父地域のオオカミ信仰について」を参考にすると、日本では、中世になると山の神の神使・警護者として狼を認識するようになった修験者などが全国に進出し、狼信仰を伝えたということであったらしい。日光修験、熊野修験らが行場として利用するため秩父の山岳へ進出し、室町時代になると、修験が秩父の山岳に祠を設けて居住するようになりました。

そして江戸時代になると秩父を中心にした地方では、民間信仰であった狼信仰的なものを寺社が取り込み、狼のお札を配り始め、害獣防止などの需要があったために、急速に関東地方周辺に広まっていきました。

各時代によって狼信仰の形態が違いますが、もともと「元型」としての狼信仰がずっと底辺に流れていたことは間違いないのではないでしょうか。

ただし、太古の時代はまさしく狼そのものに対する信仰でしたが、時代が下るにしたがって(特に日本では)、「狼さま」「お犬さま」という狼を元にした霊獣のようなもの(観念的な狼)を信仰するように変わってきたのかなと思います。

 

 

 

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2025/11/09

2026年(令和8年)版「旧暦棚田ごよみ」

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 来年の「旧暦棚田ごよみ」販売始めました。

NPO法人棚田ネットワークのHPよりご注文ください。
https://www.tanada.or.jp/tanada_goyomi/

 

私たちは時計や暦を発明して「時間」を普通に感じて使っていますが、考えてみれば、たとえば1日が24時間、1年が365日というのは、偶然で特殊な例だと気がつきます。
昔、あるTV番組を見ていたら、赤色矮星を周るその惑星は、赤色矮星に近すぎるので、いつも惑星は引力の影響を受けて自転をしないそうです。赤色矮星は空のどこかにあってずっと動きません。
自転しない惑星の話ですが、そのような惑星に人類のような生物が生まれていたとしても、彼らは時間を意識できないかもしれません。できないというより、違った時間の単位を持つでしょう。当然ですが、24時間や365日にはなりません。
時間が違うとコミュニケーションは難しいという話です。SFの話だけではありません。私がイランのカスピ海沿岸地方の棚田を撮影に行ったときのことです。
何か祭りがあると聞いたので、それがいつなのか尋ねたのですが、いっこうにわからず諦めた経験があります。
イランへ行ったのも15年程前だし、テヘランなどの都会は別でしょうが、当時、田舎に行ったとき、「西暦(グレゴリオ暦)」がまったく通じず、すべて「イラン暦」で答えられたからでした。イラン暦は、春分から一年が始まる暦で「ヒジュラ太陽暦」ともいわれます。春分の日はノールーズ(ペルシア語で「新しい日」という意味)として盛大に祝われます。
暦が違っただけでこれだけ話が通じないんだなと愕然としました。西暦に慣れてしまっていると、他の暦には即座に対応できません。頭がこんがらがってしまうのです。「なんで西暦がわかんないの?」と逆切れしました。イラン暦でさえこうなんだから、ましてや、広い宇宙で自転のない惑星に住んでいる生物ならどんなことになってしまうのか。
 
暦はコミュニケーションを取るための必要なものであることを言いたいのですが、また、使っている暦によって、その人たちのライフスタイルは決まってくるということです。私たちは自分のライススタイルは自由自在に、自分で作っていると思っていますが、暦によって制約を受けていることも事実です。
毎年提案していることですが、西暦を否定するわけではなく、プラス、旧暦も気に留めておけば、世界は2倍に広がるということではないでしょうか。新暦に慣れているので、旧暦ごよみは初め使いづらいかもしれませんが、普段は気にも留めないことに意識を向けさせてくれるのも旧暦なのです。
こよみは、単なる日付が並んだ表ではありません。昔の権力者は、勝手にこよみを作ることを禁止していたくらいです。こよみが変わると、生活が変わる、そうすると考え方まで変わってきます。

 

  

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2025/08/11

鼠を捕ったギネス認定の猫

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鼠を捕った猫のことを書いていて、いろいろ調べていたら、24年間の生涯で28,899匹の鼠を捕ってギネス認定された"タウザー"という猫がスコットランドにいました。

このこと自体驚きなんですが、それ以上に、「28,899」という具体的な数に驚きました。 

鼠の数を記録していたということなんでしょうね。

たしかに、猫は捕った鼠をくわえてきて、自慢げに見せびらかすことはありました。

 

 

 

 

 

 

 

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2025/08/07

二十四節気「立秋」、七十二候「涼風至」

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少しでも涼しそうな画像をアップしておきます。

今日から二十四節気「立秋」、七十二候「涼風至(すずかぜいたる)」です。

どこが立秋? 涼風至?と突っ込みたくなるような連日の猛暑・酷暑が続きます。

ただ今日は若干気温が下がり地元では34.5度予想ですが、今までの暑さからこれでも「良かった」と思ってしまうのは異常というしかありません。


 
 
 

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2025/04/23

日本一低い山、日和山

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一時期、「日本一低い山」ではなくなった日和山でしたが、東日本大震災で地盤沈下が起こり、また「日本一低い山」になってしまったそうです。

ここは、遭難や熊の出没にも注意しなければならないようです。海抜3メートルの日和山。

 

 

 

 

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2025/04/14

『古代DNA』展のイエネコ

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イエネコの直近の祖先種はリビアヤマネコだそうです。写真(上)が今回『古代DNA』展で展示されていたリビアヤマネコの剥製です。

日本では長崎県のカラカミ遺跡から日本最古のイエネコとさせる骨が見つかっていますが、現代の日本猫の多くは平安時代に日本に来た猫を祖先としている可能性が高いという。

仏教が日本にもたらされたとき、大切な仏教経典を鼠から守るためにいっしょに猫も連れてこられた、というのが文献的な説。しかしこれはいかにもありそうな話で、後付けの可能性があるようです。ただ、古代DNA解析によって、日本の猫は中国の猫を祖先とするのは間違いないようで、経典といっしょに来た猫もゼロではなかったかもしれない。鼠除けという目的があったかは別にして。

写真(中)は、「動物足跡付須恵器」ですが、猫の足跡のようです。わざと付けたのか、偶然なのか、面白いですね。

写真(下)はエジプトの猫のミイラ。古代エジプトでは猫は神様で、バスト女神として信仰されました。また多くの猫のミイラが作られました。これは人のミイラと同じなんでしょうが、魂が再び体に戻るためには、肉体がちゃんと保存されていることが大切と考えられていたとのこと。それを猫に対しても行ったということらしい。

中国大陸や沖縄あたりで行われていた猫が死んだら木に架けておく葬方も、このエジプトのミイラとどこかでつながっているんでしょうか。

 

 

 

 

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2025/03/25

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昨日の夜はすごかったですね。

あっという間に雹で道路が真っ白に。屋根に当たる雹の音に恐怖を覚えるほどでした。

これほどの雹が降ったのは初めてです。

幸い、屋根にも、車にも被害はなかったようです。

 

 

 

 

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2025/02/08

『MEKONG THE LAST RIVER  メコン・ザ・ラストリバー』の動画(YouTube)

 

『MEKONG THE LAST RIVER メコン・ザ・ラストリバー 無垢なる大河 旅の記憶』の動画をYouTubeにアップしました。

発売日: 2025年03月
著者: 青柳健二
出版社: イカロス出版
ページ数: 336p
寸法 ‏ : ‎ 21 x 14.8 x 3 cm

本書は、30年前の写真集『メコン河』(NTT出版 1995年)、『メコンを流れる』(NTT出版 1996年)を一巻の作品として再構成したものです。多数の写真や新原稿「三〇年後の刊行に寄せて 激動時のメコン河を旅する」を追加したほか、全編にわたって加筆・訂正を施すなど、新たに編集しました。
当時は未発表だった写真も掲載します。今では見ることのできない習俗・風景の写真は貴重な資料にもなります。

【Amazonのページはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/4802215622

【楽天ブックスはこちら】
https://books.rakuten.co.jp/rb/18088767/?variantId=18088767

  

  

  

  

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2025/01/18

『メコン・ザ・ラストリバー』購入者期間限定特典デジタル写真集

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 こちらがアマゾンで予約・購入した場合のデジタル写真集『メコンデルタearly90s』

https://www.amazon.co.jp/dp/4802215622 

 

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こちらが楽天ブックスで予約・購入した場合のデジタル写真集『メコン源流へ』

https://books.rakuten.co.jp/rb/18088767/?variantId=18088767

 

 

 

 

 

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2024/12/20

あれから30年『メコン・ザ・ラストリバー 無垢なる大河 旅の記憶』2025年2月刊行予定

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30年前の写真集『メコン河』とフォトエッセイ『メコンを流れる』をいっしょにしたような書籍が出版されます。

当時は未発表だった写真も掲載します。今では見ることのできない習俗・風景の写真は貴重な資料です。書籍は2025年3月刊行予定です。

Amazonでは予約のページが出来ました。カバー書影はまだ変わる可能性があります。 

https://www.amazon.co.jp/dp/4802215622

 対象期間に『メコン・ザ・ラストリバー』をAmazonにて購入いただいたかたには、特典PDFをダウンロード提供!!

著者が訪れた当時、世界的大河であるにもかかわらず源流域が不明瞭であった最後の大河メコン源流探訪記はじめ、1995年の「メコン川の持続可能な開発に関する協力協定」から30年の時を経て国際社会から注目される昨今、現代化の波で激変した流域民の暮らしの最後の姿を活写する充実のノンフィクション。秘境的要素の強い現流域探訪から豊穣なる中・下流域までを旅して、悠久たる大河の流れと、流域で暮らしていた人々の最後の姿を活写する記念碑的ルポルタージュ。

 

【目次】

 

・源流に立つ
・大理 一九八五年
・西双版納 一九九三年
・モンラ 緑三角
・ミャンマー・シャン州 ある占い師の話
・北部タイ ケシ畑を見に行く
・北ラオス・ファイサイ 食堂の姉妹
・ビエンチャン 仏典とコンピュータ
・リーピー 精霊の棲む滝
・アンコールワットを見たい
・チュレンチャムレの巨大魚
・メコン・デルタ 一九九四年十二月
・メコン河口に立つ
・元版あとがき
・再びのメコン 

 

 

 

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