インドネシア バリ島の棚田
インドネシア、バリ島の内陸部、芸術の村ウブドゥ周辺にもたくさんの棚田が点在します。
バリ島は、また千年前に作られた「スバック」と呼ばれる水利管理組織で有名です。バリ・ヒンズー教が主体になった宗教色の強い組織で、「スバック」それぞれが持つ寺院では、祭りも欠かしません。定期的な会合では、水の管理や、管理費の徴集の相談をします。組合員はみんな協力して、水利施設のパトロールをし、水が配分計画通 りにきちんと流れているかをチェックします。大雨のあとなどは、水路に堆積した土砂を協同で掃除もします。
ウブドゥから北へ6kmのテガラランには、有名な棚田があって、道路に面 したところには、土産物屋が店を開いています。大型バスが止まり、外国人観光客が、記念写 真やビデオを撮っています。ウブドゥ郊外には、棚田を見下ろせるリゾートホテルも建ちました。棚田は、ここでは観光地です。
インドネシアがオランダの植民地だった1924年に、オランダ王立郵船会社とアメリカン・エキスプレス社共同主催のツアーがバリ島に立ち寄ったのが最初で、それ以降バリは、観光の島として発展してきました。 現在これだけ観光化が進んでいても、バリ人は日常の生活習慣や、宗教儀礼は淡々と続けています。観光客がこれ以上踏み込んだら許さないというぎりぎりのところで外国人を扱っている彼らのバランス感覚にはおそれいります。それも長年にわたる観光業の伝統があるからでしょうか。
しかし、そのバランスも危ういところまで来てしまったという話も聞きます。観光客が増え、ホテル用の水が大量 に必要になり、農業用水を、そちらに転用しなければならなくなりました。生活排水が、用水路に流れ込み、灌漑用水が汚れ始めています。将来も、このまま美しい棚田や田園風景を維持することはできるのでしょうか。
2012年にはバリ島初の世界遺産「トリ・ヒタ・カラナの哲学を表現したスバック・システム」ができました。メインはジャティルイ棚田ですが、棚田を歩いてみるとわかるように、豊富な水が流れていて、このスバック・システムがうまく機能しているのがわかります。
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