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2015年8月27日 (木)

シャッターを押す瞬間---意識と無意識を記録するカメラ

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前から気になっていたことがあります。

撮った写真をあとで詳しく見たとき、映りこんでいたものに初めて気がつくという体験があります。それと撮った記憶がない写真に気がつく(しかも、それがいい写真だったりする)という体験もあります。

写真を撮っている人ならきっとあるでしょう、こういう体験。

たとえば、こんな具体例です。

中国の雲南省元陽で撮影した棚田の写真なのですが、無人だと思っていたのに、あぜ道に人が立っていたのです。小さくてよく見ないとわかりません。撮影しているときはまったく気がつきませんでした。

自分の写真展のとき、大きくプリントした写真の隅のほうをじっくり見るのは面白いですね。棚田の「あぜ道の人」はそうやって見つけたのでした。

写真が客観的に見えるとでもいったらいいでしょうか。自分では「あぜ道の人」にも気がつかず、違ったところに注意を向けてシャッターを押しているのだから、当然ですね。自分の写真でありながら、他人の写真のように楽しめます。

キャノンの新しいEOS 5Dsは5060万画素という驚異的な高解像度を実現しました。性能的には一次元違ったカメラになった印象を受けます。EOS 5Dsの高解像度は、気がつかないものがもっとたくさん自動で写し撮られるということにもなります。あとでの発見が多くなるでしょう。

それとこれも雲南省の写真ですが、当時はまだフィルムだったので、現像したら、まったく撮った記憶のないハニ族少年が藍染の布の間から顔を出している写真に気がついたのでした。

意外と何も見ないでシャッターを押しているのでしょうか。

「何も見ない」というと極端かもしれないので、「フレームの隅々まで注意を払って見て、シャッターを押しているのではない」ということです。ある狭い部分をスポットライトのように意識を集中させているか、あるいは反対に、全体をボヤ~っと見ているかもしれないなぁと。

細かいところまで注意を払っていたら、脳がいくら大きくてもたりません。写真の情報は膨大なメモリーを必要としますが、人間の脳でもカメラでも同じです。

ただ、ここが人間の不思議で面白いところなのですが、注意を集中してなくて、「何が映っているか」に気がついていなくても、目の網膜ではちゃんと捉えていて、無意識レベルではその情報も処理しているらしいのです。認知心理学では「無意識の認知」と呼ぶらしい。

意識しているところでは「見てない」と思っていても、無意識では「見ている」ということなので、頭がこんがらがってしまいますね。けっきょくどっちなんだ?と。

雲南省の棚田の写真も、無意識では「あぜ道の人」にちゃんと気がついていた可能性があるらしい。それどころか、この「あぜ道の人」になんらかの影響を受けてシャッターを切った可能性すらあるということ。

もっとすごいのは、写真を撮ったことさえ記憶がないハニ族少年の写真ですが、これなんかは、おばさんの写真を何枚も撮っている途中で、少年が布から顔を出した瞬間「はっ」と思ってシャッターを切り、今まで続けていたおばさんの写真を撮り続けたので、この1枚のことは意識されなかったのかもしれません。フィルムには、おばさんの写真の間に、少年の写真が1枚はさまっていたからです。俺の意識はおばさんしか見ていなかったということになります。

こういう面白い実験があります。「選択的注意 Selectiv Attention Test」というものです。

ネタバレ注意。先に内容がわかってしまうと意味がないので、テストを受ける人は、以下の文章は後で読んでください。

https://www.youtube.com/watch?v=vJG698U2Mvo

バスケットボールのビデオなのですが、「何回パスをしたか正確に数えてください」と言われて数えることに集中すると、試合会場を横切ったゴリラの着ぐるみの人物に気がつかないという実験です。

人が何かに注意を集中していると、かなり大きな事が画面の中で起こっていても、意識できないということを証明する心理学実験です。

この実験を見れば、「あぜ道の人」や「ハニ族の少年」に気づかなかったことも、ありえる話だなぁと思います。

カメラは、「選択的視認 」の実験にはだまされません。だから、カメラは人間の意識・無意識すべて含めたところを記録してくれるすごい機械であると言えるかもしれません。

「すごい機械」というのは、良くも悪くも、その冷徹な感じさえする圧倒的な客観性です。それと比べると、人間のなんといい加減なことか。前も書きましたが人間は「見たいものしか見ていない」と言ってもいいでしょう。でも、そのいい加減さが人間らしく、また愛おしいところなのですが。
 
 
 
 

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